意外と知られていませんが、レアル・マドリードとMicrosoft社は非常に親密な関係にあります。それはMicrosoft社がレアル・マドリードをデジタル面でサポートしたことから始まりました。
この記事ではレアル・マドリードがMicrosoft社の支援を受けることになったきっかけからスター選手達がHoloLensを使った感想を述べている様子についても記載していきます。
Microsoft社のYouTubeチャンネルにアップロードされている動画ではレアル・マドリードの選手達がタブレットやOffice、キネクトなどMicrosoft製品を使う様子が紹介されていますが、中でもHoloLensを使う様子が特にフォーカスされています。
世界的な人気サッカーチームの悩み
世界中で5億人のファンを抱えるレアル・マドリードは世界有数の人気サッカークラブです。1902年に設立され、これまで12のヨーロッパカップ、2つのFIFAクラブワールドカップ、3つのインターコンチネンタルカップを含む100以上のタイトルを獲得しました。
しかし、これだけのビッククラブでありながら最近までファンとの交流は、サンティアゴ・ベルナベウ・スタジアムで試合を観戦したり、ウェブサイトを訪れたり、ソーシャルメディアにアクセスするファンに限られていました。
クラブ経営陣はクラブをデジタル化することによってファンとの関わりを劇的に向上させることができる考え、クラブを助ける技術のリーダーとして、Microsoft社と提携することに決めました。
Microsoft社は自社のアセットを活用してグローバルなデジタルスポーツ・プラットフォームを構想・開発し、展開するための支援をしました。
現在、レアル・マドリードでは世界中のあらゆる場所で一貫して最高のファンエクスペリエンスを提供するためにMicrosoft社のクラウドサービスが活用されています。ターゲットを絞ったプロモーションキャンペーンを実施し、ビッグデータを活用してファンの行動を追跡・分析しています。
調査で判明した意外な巨大市場
レアル・マドリーのジョゼ・アンヘル・サンチェス最高経営責任者(CEO)は、「世界のレアル・マドリーを支えているすべての人々とつながりたい」と語り、97%のファンがスペイン国外に居住していることを指摘しました。
そこで、Microsoft Servicesチームはレアル・マドリードの世界的なデジタルスポーツ・プラットフォームを開発すべく戦略的なプロジェクト・フレームワークを定義しました。
まず、分かったことは結局のところ、ほとんどのファンはスペイン外に住んでいるということです。
そして、最大の市場は世界中のファンの11%を占めるインドネシアでした。これまでレアル・マドリードはこのような「典型的な」ファンを定義できてなかったため、これらの調査結果を元にファンの行動データ収集や分析を行っていきました。
テクノロジーを活かす
Microsoft社が協力したことの多くはMicrosoft Azureから引き出されていましたが、他のにはMicrosoft Dynamics 365、Office 365、Power BIなどが含まれていました。
このプロジェクトには、およそ50人のMicrosoftサービスチームメンバーがコアチームとして参加し、他には150人ものマイクロソフトの専門家がデータサイエンスやアプリケーション開発などの分野で様々な貢献をしていました。
レアル・マドリードのCIOであるエンリケ・ウリエル氏は「Azureプラットフォームは、私たちが必要とするときにいつでも必要なサービスを提供できるため、大変役に立ちます」と語っています。
また、クラブのデジタル事業を統括するラファエル・デ・ロス・サントス氏は「ちょうど12ヶ月前、私たちのデジタルチームには5人しかいませんでしたが、現在はデータサイエンティストを含む30人以上がいます」と述べています。
世界中のファンと繋がるための4つの要素
今日、Microsoft社によって構築されたレアル・マドリードのデジタルスポーツ・プラットフォームは高度な分析機能を使用して豊富なコンテンツを提供し、ファンの行動を深く理解することができます。それは4つの要素から構成されています。
① ファンエンゲージメントプラットフォーム
これはレアル・マドリードのバックオフィスのマーケティング・エンジンです。スタジアムでのモバイルチェックイン、ウェブサイトでのプロフィール更新、オンラインでの商品購入のいずれの場合でも、すべてのファンのやり取りをキャプチャしています。
このシステムにはMicrosoft Office 365、Dynamics CRM 365(カスタマーサービス用)、Dynamics 365(マーケティング用)、Power BI(パワーBI)の機能が統合されています。
また、このソリューションはMicrosoftソーシャルエンゲージメントを使用して、すべての主要ソーシャルメディアからのクラブの言及やその他のデータを収集しています。
② 拡張ビデオプラットフォーム
Azure App ServiceとAzure Media Playerに統合されたAzure Media Servicesを使用することで、過去のクラブマッチを含め、新旧のビデオコンテンツを配信することができます。
Azure Searchはファンがさまざまな基準を使って特定のゲームを検索できるようにしており、ライブマッチでは特定のカメラを選択してキーの再生やプレイヤーの動きを確認することもできます。
③ コンシューマアプリケーション
iOS、Android、Windowsプラットフォーム向けのレアル・マドリードのモバイル・インタラクティブ・アプリは、それぞれのアプリストアで最高の評価を得ています。
世界中どこからでもレアル・マドリードのコンテンツにアクセスでき、過去および現在のすべてのクラブの選手のデータを検索したり、クラブの統計データを調べることができます。
④ Azure Active Directory B2Cアイデンティティサービス
これは、ユーザー認証とプロファイルストレージを提供します。ファンは、Facebookなどのソーシャルメディアアカウントを使用して登録してログインすることも、従来のユーザー名とパスワードを使用してすべてのデバイスでシームレスな体験をすることもできます。
どちらの方法でも、セキュリティ、データ侵害、およびスケーラビリティに関するクラブの懸念が緩和されます。
レアル・マドリードのデジタル・トランスフォーメーションはデータ駆動型であり、これら4つの要素は、その変革を大幅に加速させたとクラブの商業ゼネラル・マネージャーであるベゴーニャ・サンズ氏は述べています。
彼は「私たちはファンについてできるだけ多くのデータを取得しようとしているので、すべてのタッチポイントで提供するものをパーソナライズすることができます」「これまでは5つのソースからデータを取得していましたが、今はMicrosoftのクラウドプラットフォームを使用して70を超えるソースから取得しています。これにより、私たちは過去2年間で約400%のファンプロファイルを増やすことができました。現在、数百万に上っています」と述べています。
今後はHoloLensの活用も?
また、動画では選手達にHoloLensを使った感想もインタビューしています。HoloLensはケーブルによって動きを制御されず3Dのコンテンツを表示することができるので選手達の間でも好評のようです。
以下はHoloLensを使用している選手達の声です。
ナバス(GK):
HoloLensは遊ぶことができるし、効率的な作業にも使用できます。
気分転換にも良いデバイスです。
ナチョ(DF):
監督や技術スタッフがフィールドで使うことによって、このデバイスはより価値を発揮すると確信しています。
例えばリアルタイムでトレーニングデータを取得するなど、HoloLensによって技術的な進化が起こるでしょう。
カシージャ(GK):
HoloLensを装着することによって、残念ながらベルナベウ・スタジアムに来れなかった人でも体感的に私たちのグローブ超しのようなすごく近い場所に来ることができるようになるのではないかと思います。
ベンゼマ(FW):
このことは若い世代にとって、とても重要なマイルストーンで、今後が楽しみです。
空中をタップするとスター選手が出てきたり、3Dで立体化された選手が隣に来るようなことができれば面白いのではないかと思います。
マジョラル(FW):
私たちはすごい時代に生きています。
HoloLensによってファンをすごく身近に感じ、また、ファンも私たち選手と同じような体験を共有できるでしょう。
マルセロ(DF):
技術の急速な発展で未来は予測不可能です。
私にも分かりません。しかし、これはすごいものです。
私見
日本でも楽天がスポンサーを務めるバルセロナの選手達をMRを使って立体化していましたが、今後はもしかしたらレアル・マドリードでも同様にMRを使ったコンテンツが出たり、試合現場やトレーニングで活用される日がそう遠くないのかもしれません。